ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

『五等分の花嫁』第88話 -ねとねと懺悔-

完全にナめていた。

私はてっきり、数話くらいかけて、四葉と風太郎が京都を練り歩く様子をクローズアップするものだと思っていた。だから今週は、だらだら観光しているシーンを描くんだろうな、楽しみだけど中休みみたいな回なんだろうなと、高をくくっていた。

かんぜんにアホ丸出しだった。

京都観光のシーンは、冒頭のわずか1ページで終了した。

そして約8ページかけて、神社の前で"あの日の約束"を打ち込み、その後はページごとに怒涛の伏線回収を果たした。しんじられない勢いだった。

ラブコメ、特に週刊少年誌に掲載されるラブコメというものは、引き伸ばしから逃れられない運命にあった。ぼくとあの子の関係性は、3歩進んで2.99歩下がるを繰り返し繰り返し、ようやく結ばれそう、と思ったらクソみたいなライバルキャラがポコポコ登場してまたリセットを繰り返す、というのが、近年のお約束だった。その集大成が、『ニセコイ』というラブコメであり、週刊少年ジャンプの歴史に残るほど売れてしまった一方で、歴史に残るクソ漫画として未だに一部読者からヘイトを買っているわけである。そんなジャンプは今なお現在進行形で、ラブコメ漫画の引き伸ばしを続けていて、味のなくなったガムを読者に噛ませ続けているわけである。ナムサン。

そんな掃き溜めがごとき状況の中、『五等分の花嫁』はまことアッパレな漫画で、序盤から話の展開に躊躇がなく、とにかく毎話毎話、物語を前進させる力に溢れていた。その勢いは中盤も続き、終盤に差し掛かったと思われる現在もなお勢いを失っていない。

そんなことは私はとっくにご存知だったはずだが、どうも心の中でまだナめていたらしく、ここまで一話で伏線を回収してくるとは思ってなかったし、しかもかんぜんに予想していた展開の上を行っていた。物語の調和が取れすぎている。

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私はてっきり四葉は運動方面に頑張ることを約束していたものだと思っていたので、勉強を頑張るつもりだったことは恥ずかしながら予想していなかったし、お金を稼ぐという目的も考えてなかった。しかしこれは予想すべき範囲内だったし、いま考えてみれば物語の整合性を鑑みても当然の出来事である。かんぜんに考察が敗北した瞬間である。真っ向勝負での負けである。ねとはは敗北を認める。

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母親に特に懐いていた五月が、死に絶望して、母親をトレースするように敬語を使うようになったことは、誰もが考えていたことだったはずだが、それをこの僅か1コマで表現するとは思わなかった。絵とセリフの説得力が強すぎる。ちょっとこの人、漫画がうますぎる。

というかこの作者、うますぎる。単純に画力が高いという意味ではない。序盤から飛躍的に絵がうまくなっているのは事実だが、これくらいの画力の漫画家はごろごろいる。うまいと思うのは、平たく言えば「表情の描きわけ」である。物語の要所要所に必ず訪れるクリティカルな場面、すなわち"見せ場"にて、シーンにふさわしい表情を作り上げるセンスが尋常じゃない。記号的表現・喜怒哀楽のコピーアンドペーストにぜんぜん逃げず、毎度"今""ここに"必要な新しい表情を作っているので、場面の説得力が倍増しているのである。

恐れ入った。絵の説得力が強ければ、間延びしたセリフが必要なくなり、結果コマの濃度が濃くなり、 話のテンポも良くなるというわけである。

美しい漫画は、1コマが踏み出した勢いを次のコマが受け取り、その力を殺さずに新しい動きを生み出し、また次のコマに受け継いでいくという、ダンスのような流麗な動きを魅せるものだが、『五等分の花嫁』からもその技量をしかと見出した。

ねとはは敗北を認める。

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