2016年 ねとは漫画ランキング 30作品
前投稿で、自分が『漫画トロピーク』というサークルに所属していることを表明した。
それで、このブログでちょいちょい漫画評をしていきたいと思っているのだけれど、その足がかりとして、僕が投稿した、漫画トロピークの2016年・個人ランキングを公開しておきたいと思う。
全体としてのレギュレーションとしては、2015/11/1~2016/10/31までに単行本・雑誌・webいずれかの媒体で発表された商業作品が対象。
なので、雑誌では連載されているけれども、未だ単行本になっていないもの、あるいは、読み切り作品なども対象となってくる。が、今回僕は全作品を単行本刊行済みのものから選んだ。前年まではそうでもなかったのだけれど。趣向を変えた理由は、未単行本のもの、つまり連載開始して間もないもの(※勿論例外はある)は、後々失速してしまうことがあって、結果的に残念早漏、となる場合があるというのが一つ。もう一つは、なんとなく、形として綺麗に収まるのが良いかな、というやや強迫的な理由である。また来年(というか今年)からは趣向を変えるかもしれない。良い読み切りも既に沢山あったし。
さて本題。今回僕が選んだベスト30はというと。
1 |
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ミザントロープな彼女 | 厘のミキ |
2 | ライアーバード | 脇田茜 | |
3 | ハーモニー | 原作/伊藤計劃 Project Itoh 漫画/三巷文 | |
4 | ファイアパンチ | 藤本タツキ | |
5 | うちのクラスの女子がヤバい | 衿沢世衣子 | |
6 | かぐや様は告らせたい | 赤坂アカ | |
7 | 鬼滅の刃 | 吾峠呼世晴 | |
8 | ニュクスの角灯 | 高浜寛 | |
9 | あげくの果てのカノン | 米代恭 | |
10 | VECTOR BALL | 雷句誠 | |
11 | それでも町は廻っている | 石黒正数 | |
12 | アダムとイブ | 作/山本英夫 画/池上遼一 | |
13 | 妄想テレパシー | NOBEL | |
14 | ゴールデンゴールド | 堀尾省太 | |
15 | ゆらぎ荘の幽奈さん | ミウラタダヒロ | |
16 | ローカルワンダーランド | 福島聡 | |
17 | ディザインズ | 五十嵐大介 | |
18 | 柊様は自分を探している。 | 西森博之 | |
19 | 氷上のクラウン | タヤマ碧 | |
20 | AIの遺電子 | 山田胡瓜 | |
21 | 第七女子会彷徨 | つばな | |
22 | さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ | 永田カビ | |
23 | あそびあそばせ | 涼川りん | |
24 | スローモーションをもう一度 | 加納梨衣 | |
25 | 正義の殺人鬼 | 鈴木優太 | |
26 | やがて君になる | 仲谷鳰 | |
27 | ラジエーションハウス | 原作/横幕智裕 漫画/モリタイシ | |
28 | インフェクション | 及川徹 | |
29 | 手品先輩 | アズ | |
30 | ネオ寄生獣 | 原作/岩明均 漫画/萩尾望都 太田モアレ 竹谷隆之 韮沢靖 真島ヒロ PEACH-PIT 熊倉隆敏 皆川亮二 植芝理一 遠藤浩輝 瀧波ユカリ 平本アキラ |
基本的には、期間である一年間の間に第一巻が刊行されたものを選んでいる。多分「やがて君になる」だけギリギリ期間直前に1巻発行だけど、それ以外は全部期間内に初巻刊行のもののはず。
【※訂正:11位と21位は完結枠でした】
さしあたって、これらの漫画を今後レビューしていきたいと思っている(思っている)。
ちなみに順位の順番通りに行うと決めたわけでは無いので、あしからずご了承ください。
『漫トロピー』と『漫画トロピーク』
これまでこのブログにおいて、京大のサークル、『京大漫トロピー』の結成までの経緯を紹介してきた。
今後ゆっくり、始動後から軌道に乗るまでのアレコレを書いていきたいと思うが、その前に、ある程度、タイトルの2つのサークルの概略をご紹介しておきたいと思う。
たぶん、今のところのほとんどの読者は上記2つをご存知の方々であると思うが、一応の区切りとして書いておく。この区切り以降、漫画レビューもしていきたいと思っている。
まず、漫トロピー。正式名称は『京大漫トロピー』。(http://mantropy.net)
2008年に結成したわけだから、今年で創立10年目に当たる(※not 10周年)。
流石にもう僕は顔を出していないが、現在も一年を通しての活動内容は軌道に乗っている様子である。
大きな活動は、機関誌「京大漫トロピー」の発行。現在はvol.17まで発刊されている。
一年を通して、春と秋の二度、発行され続けている。
春号は、新歓号で、4月に発刊。主に新入生へ向けて、サークルの大きな名刺代わりとしての役割も備えている。が、名刺以上の内容も盛り沢山なので、関西コミティアや夏コミでも頒布されている。
秋号は、学祭号で、11月に発刊する、ランキング号。サークルにとって、これが最も大きなイベントになる。体育会系部活にとっての大会みたいなものだ。一年の集大成。内容は、(また今後書いていきたいと思うが、)ほとんど東大(TMR)のパクり、もとい、東大からインスパイアされたもので、一人あたり年間の面白かった漫画ランキングベスト30を提出、それらを人数分集計し、総合ランキングを算出。それらの漫画をレビューし、座談会を行う。また、毎回異なるテーマを決めて(たとえば「ヤンキー漫画」だとか)、班分けして、クロスレビューを作成する。ほか、突発的に特別企画を行ったり(実写版「イカ娘」とか)、個人寄稿で各々の思い入れがある漫画の深いレビューを行ったりする。なお、毎年冬コミでも頒布されている。
構成自体は東大のTMRとほとんど同じだが、内容の趣は実は結構、違っていたりする。どこがどう、という説明は難しいのだが、大学そのものの雰囲気の違いが出ているのは間違いない。京大はどこか、ふざけた部分があるというか、適当というか……。
これは良し悪しの問題ではなく、特色の違いで、自然に表れた差別化であると捉えている。
さて、ほか、機関誌の発行以外は割と自由で、毎週の例会では各々が漫画を持ち寄り、簡潔なレビューを行ったり、漫画の貸し借りを行ったり、例会の終了後の夜中は麻雀やらボードゲームやらに興じていると聞く。時折旅行も行ったり。クリスマスの時期にはプレゼント漫画交換を行ったり。ちょこちょこと、自然に伝統化した行事で、一年間が動いているようである。
これが『京大漫トロピー』。
そして、似て非なるアナル漫画サークルとして、『漫画トロピーク』というものがある。
現在、僕はこちらに所属している。
かなり名称が似ているサークル、漫画トロピークとは一体何なのか?
公式の文言を引用しよう。
「漫画トロピークとは……東京大学漫画調査班TMR(1998年設立)と京大漫トロピー(2008年設立)という2つの漫画読む系サークルのOBが中心となって結成された謎の社会人漫画読みサークルです。もちろん2サークルのOBでなくとも参加可能です(そういう会員は現在半ダースくらい)。いまのところは、世界一読めてる漫画ランキングを年末に発行することと、夜な夜な繰り広げられる狂乱の飲み会がメインの活動。」
ということである。
基盤が2つのサークルの合体にしては、漫トロピー寄りなサークル名の気はするが、そのあたりは由来に適当な紆余曲折があったがためであり、大して深い意味は無い。一応、略称は「トロピーク」である。語感も悪くないのでは? 何がピークなのかは分からんが。
『漫画トロピーク』もまた、紙面自体はほとんど同じ内容である。
年2回発刊で、夏コミと冬コミに主眼を置いている。
メインの冬コミ号では、各人、基本的には30作品(人によっては10か20作品)の個人漫画ランキングを提出、集計し、総合ランキングを算出、レビューと座談会を行う。
夏コミ号では、また別の特集を行っている。去年と今年(予定)は、「漫画で読破を読破」という企画を行っている。このあたりはまた、公式twitterや公式HPでご確認頂きたい。ユニークで我々ならではの企画であると思う。
さて、『漫画トロピーク』の会誌の名称は『このマンガガガガ』という。
元々は、山下ユタカ氏の漫画「ガガガガ」にあやかっており、記念すべき第一号の表紙絵も氏に描いて頂いた。
内容のクオリティは、手前味噌ながらもかなりの自信がある。が、あんまし売れてません。みんな、ぜひ手にとってみてほしい。ねとはからのおねがいだ。
要因はひとえに、宣伝力不足だろうと思っている。世の中、漫画好き、というか”漫画読み”と呼ばれる人種が、少ないながらも一定数存在しているはずで(twitterの♯俺マン とかに参加している人とか)、そういった方々にリーチしたいところであるのだが……。
このブログでは、この先、各論的に漫画レビューをちょいちょい行っていきたいなぁと思っている(思っている)のだが、『漫画トロピーク』の宣伝もしたいと思っているのである。
ここらで少し、紙面を紹介しよう。トロピーク公式twitterで使用された画像を引用する。
こんな感じである。なお著作権については、批評の引用の範囲内にあると解釈して使用している。
我々の目的の一つとして、低迷しつつある漫画業界の活性化の一助となりたい、というのがある(はずである。少なくとも僕はそう思っている。)
個人的な話になるが、京大漫トロ創設以来、僕は毎年漫画ランキングを作成してきたが、その中の結構な数の漫画が憂き目に遭ってしまっている。読む人が読めば面白いと思ってくれるであろうのに、悲しいことに、膨大な数の漫画に埋もれてしまい、なかなかリーチしない。非常に残念な話である。しかし、可能性はあるはずである。最近では「あそびあそばせ」というギャグ漫画が、twitterで偶然にうまくバズることによって売れ、webからヤングアニマル本誌へ移籍を果たした、という好例がある。
今現在、漫画ランキング本としては、宝島社の「このマンガがすごい」と、フリースタイル社の「このマンガを読め」が双璧で、アノニマス的にはtwitterを媒介とした「♯俺マン」があったりする。(なお雑誌のダ・ヴィンチでも一応ランキングをやっているが、当たり前だがアレは全然ダメ。)
これらのランキング媒体の目的の一つとして、マンガ業界の活性化、というのがある、と勝手に思っている。ここ数年、漫画の帯や広告の宣伝文句でも「このマンガがすごいで第○位!」という文言が踊っているのはよく目にすることである。「#俺マン」でさえも利用されているし、もっと言えば、「twitterで話題になったこのコマも収録!」みたいなのも宣伝として使われている時代である(ごく最近では「とんがり帽子のアトリエ」の帯)。
そして、我々のランキング本もこれらの広報力に負けないクオリティを放っている、と、思っている。別に大して利益を追求しているようなサークルでは無い(というか今赤字なのでは?)ので、せめて多くの人に知ってもらい、楽しんでもらい、みんな、面白いマンガを読んで幸せになろう(あるいは、”面白さを知ってもらおう”)、と、そう思う次第である。
とりあえず、『漫画トロピーク』を知らない方は、公式HP(http://manxxxx.com)をまず是非ご覧になって下さい。公式twitter(https://twitter.com/manga_trpk)も(かなり適当ですが)追って頂ければ幸いです。なお、最新号は現在「コミックZIN」にてご購入頂けます。
漫トロピー⑧ 《漫トロピー結成篇 了》
ルネにて。
まず彼、Mに、メールでは伝えきれなかった、細かな僕の考えを伝えることから始めた。
改めて、漫画読みサークルが京大には存在しないこと、無ければ作ればええやろという発想に至ったこと、それを我々から始めようということ、そして、東大にはその手のサークルがあるので、彼らを参考にしたいということを話した。
おもむろに僕はTMRの冊子を取り出し、彼に見せた。彼はすぐに肯いてくれた。
ほぼ二度目の再会だったし、ややぎこちない会話で進行していたものだから、当時の僕にはわからなかったが、後に彼から聞いた話によると、この時彼は「ワクワクしていた」ということだった。「何かとんでもないことが始まろうとしている」と。
そして実際、この時が、多くの人間にとっての転機だった。
空論を現実化するには、まずは人が必要だった。
時は、2月中旬。
もちろん4月の新入生勧誘を視野に入れる時期だが、先んじてこの段階で、我々の顔なじみ、かつ、漫画好きの人間を集めることにした。そうするとやはり高校時代の同級が対象になってくる。
相談して、何人かその時に当たりをつけ、後日それぞれから声をかけ、そして再度集まることになった。
2008年2月25日。やはり場所はルネ。
7人が顔を合わせることになった。全員顔見知りである。
1人目は僕、後のHNはねとは。
2人目はM、後のHNは渡来僧天国。
3人目はD、後のHNはわんだ。
4人目はS、後のHNはエムおー。
5人目はC、後のHNはRex。
6人目はK、7人目はF、しかし結局彼ら二人はこの場以降はサークルに残らなかった。
始動の時点として、必要最小限の人数がその場に集まっていたと思うが、サークルとしてこの先、形となっていくのか、まだ現実味は帯びていなかった。
けれども、後に振り返ってみれば、紛れもなく、この時にサークル「京大漫トロピー」が結成されたのだった。
なぜ「漫トロピー」というサークル名となったのか。
根底には、あまり堅くならないよう、また逆にウケを狙わないよう、自然というか、適当な感じで名付けた方が結局は良いだろう、という意図があった。
皆様はレミオロメンという音楽グループをご存知であろう。そのグループ名の由来は、メンバー3名それぞれが好きな言葉、レ、ミオ、路面を組み合わせたものであるという。
その発想にあやかり、7名それぞれが、好きなカタカナを一文字ずつ挙げ、それを適当に組み合わせる、ということにした。
集まったカタカナは、モ・ト・ヴ・ロ・ヌ・ヱ・ワ
それをランダムに組み合わせて、モワヱヌトロヴ。
これに近い(?)単語として、more entropy。
漫画の「漫」はサークル名に入れた方が良いだろう、という意見もあり、結果的に漫tropy→漫トロピーという名称へと至った。そしてその場の全員がこの名称を気に入り、笑い声を上げた。
漫がエントロピーに従って拡散していくようなニュアンスも感じ取れて、今考えてみても、偶然にしてはなかなか良いように収まったと思う。マン、が、トロ、ピーと、"捉えようによっては"微妙に卑猥な感じなのも洒落が効いているし、語感も良い。もちろん、略称は「漫トロ」だ。
この場ではサークル名の他に、さしあたっての活動内容が大まかに決まった。
漫画の情報交換を行う場とするということ。具体的には漫画を持参し、その場でレビューを行うということ、座談を行うということ。
機関誌を発行するということ。
活動場所はさしあたりルネで、月3回くらい集まろうということ。
また会長が僕、ねとはで、副会長がM、渡来僧天国、ということ。
そして、4月の新歓に向けての準備を進めていくということ。
「京大漫トロピー」は、2008年2月25日、京都大学の学食・ルネにて結成された。
《漫トロピー結成篇 了》
《漫トロピー始動篇へ続く》
漫トロピー⑦
東大の漫画読みサークル「TMR」。
彼ら彼女らの冊子を読み終えたとき、様々な感情が湧いた。
「すごい」「羨ましい」「悔しい」。そして「ナンデ?」。
僕は精神的ジジイへとメタ擬人化し、エアお孫に脳内で話しかけられた。
「ねぇおジイちゃん、東大にはこんな素敵な漫画読みサークルがあるというのに、どうして京大には無いの? やっぱり、京大は東大に劣っているの?」
「……。」
「やっぱり京大の人たちは、一人で漫画を読むしかないの?」
「……。」
ジジイは何も答えられなかった。
もやもやとしたまま年は明け、短い冬休みをだらだら過ごしたり、試験勉強に明け暮れたり、飲み会に行ってホンワホンワしたりして、日々を過ごした。
しかしその間、僕の胸の中には、それまでの数ヶ月間で得ていた体験が、徐々に熟成し、発酵され、渦巻き、何らかの形に具象化しつつあるようだった。
そして、その考えが結晶化して弾けたのが、あの時、寒い夜の山科駅だった。
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「どうして東大には、漫画読みのサークルがあるというのに、京大には無いのか?」
「東大のサークルは、既に10年くらいの歴史はあるらしい。京大ではその間、どうして誰も作ろうとしなかったのか?」
「漫画を読む人たちだけで集まろうという発想は、そんなにも考え付きづらいものなのだろうか?」
「考え付いたとしても、やはり行動には移しづらいものなのだろうか?」
「行動に……」
「……」
「誰もやらないなら、自分がやればいいのではないか……?」
「しかし1人では……」
「……いや……待てよ……」
この時、脳内に浮かんだのは、Mの存在だった。
それまでの燻りが、この時に炎を上げた、と言えば大げさな表現になるが。
本当にその時は、ちょっとした思いつきで、学祭の時に聞いていたMの連絡先へ向けて、メールを打っていた。
細かい文面までは記憶に残っていないが、大意は覚えている。
こんな感じだ。
「漫画読むサークル作ろうと思うねんけど、一緒にやらへん?」
本当にこれくらいの文面だったと思う。一行? 二行?
驚いたことに、返事は数分で返ってきた。
「ええで!」
今考えても、このレスポンスは彼ならではだったのだろう。
ほとんど一度しか会話したことが無い人間から、夜中に突然よくわからない提案を受けたのにも関わらず、一瞬で快諾してくれたのだ。しかも全くもって、適当な返事では無かったことも、後にすぐにわかった。
すぐに予定を合わせて、ひとまず会う約束を取り付けた。
場所は「ルネ」。京大生の最大公約数的飯食い場。パフェも販売していることにより、オシャレのメッキを施す、あざとい空間だ。かといって別にオシャレな女子大生がパフェを食いに集まるという程でも無い。たいていの場合は、小汚い男性がむしゃぶりつく。僕もよく食べたものだ。ついでに言うと、後にサークルに入部した、とある後輩の必殺口説き文句は「俺と一緒にルネにパフェーを食いに行こうぜ」であったという。どうでもいい話だが。
そして某日、ルネにて、彼とぎこちなく再会した。
漫トロピー⑥
時は2007年の年末に移る。冬コミである。
ここでも記憶ははっきりしないのだが、それまであまりコミケというものに足を運んだことは無かったと思う。むしろこの時が初参加だったかもしれない。
特にお目当ての同人誌があったというわけでも無いのだが、例によってお祭り好きである自分は、コミケの喧騒をも楽しんでいたのを覚えている。
東だとか西だとかの概念もよくわかっておらず、ポポンポポンと飛び跳ね、はしゃぎながら、挙動不審に首を振り回しつつ徘徊していた。
そうこうしつつ、肉の壁の隙間を練り歩いていると、いつの間にか西の”評論島”にたどり着いていた。
「ははァ、コミケにはこんなゾーンもあるのだなァ。なに、ナンパ入門? なに、家電量販店の裏側を教えます? フムフムフーム」と、ブースというブースに舐め回すように視線を泳がせていると、ある一つのブースが僕の目を引いた。
2007年の漫画ランキング! と、その同人誌の表紙には謳われていた。
僕はいわゆる、漫画ランキング本に目が無く、宝島社の『このマンガがすごい』やフリースタイル社の『このマンガを読め』やらは毎年購入している。
そんな僕だから、もちろん、この同人誌には自然に興味が湧いた。
しかも商業誌のランキング本では無い。大学のサークルが創った同人誌媒体で、しかも東京大学なのだ。
試し読みを請い、パラパラとページをめくってみると、いかにも東大生の創った作品らしい、膨大な情報量の渦に圧倒された。
考えるまでも無く、自然と財布へ手が動いた。
関西への帰りの電車の中で、むさぼるようにその冊子を読み込んだ。
ランキングの一位こそはハンターハンターだったが、二位以下は当時の僕の知らない漫画だらけだった。
上述した商業媒体が作るランキングの傾向とはどこか違う趣もあったし、何より、冊子の構成が独特で、それでいて完成されていた。
冊子の構成は、大きく、総合ランキング、個人ランキング、座談会、クロスレビュー、個人寄稿、に分かれていた。
驚いたことに、個人ランキングは、一人30作もの漫画を順位付けで挙げていた。
1人のランキングにつき、一位が30点、二位が29点、・・・、三〇位が1点、という方式で、サークル会員約20名を集計し、その合計点によって総合ランキングが作り上げられていた。
そして、”座談会”によって、ランキングに対する談義が繰り広げられ、個人それぞれが提出したランキングについても、時に褒め(「この漫画を入れたのは偉いね、色んな漫画を読んでいるんだね」)、時に貶し(「なんだこのランキングは。君、本当にちゃんと漫画を読んでいるのかね?」)、「世界最強の漫画ランキング」を作るべく、切磋琢磨しているようだった(少なくとも大義名分としては)。
僕は衝撃を受けた。
ここまでお読み頂いた諸兄ならわかるであろう。僕が京大中を探し回っても見つけられなかった漫画読みサークルが、東大には存在し、しかもコミケに出店、内容も恐るべき完成度を誇っていたのだ。
ロマサガ2で例えれば、のほほんと洞窟を歩いていた僕の真横に突然ダンターグが出現し、”ぶちかまし”で全滅させられたようなものだった。