現実的な日記7
チャイムの音が鳴った。
ドアを開けると、ピーちゃんが立っていた。
「ピー、ピィピィ、ピピピッ」
チャイムの音が鳴った。
ドアを開けると、ピュイちゃんが立っていた。
「ピュイ? ピュイピュイ……ピュピュイ!」
チャイムの音が鳴った。
ドアを開けると、ピッピちゃんが立っていた。
「ピッピピッピピッピ!」
チャイムの音が鳴った。
ドアを開けると、白くて首が長く、クチバシが黄色い鳥が立っていた。
アフラックのCMでも見たことがあるような鳥だ。
「私はアヒルです」とその鳥は言った。
しかし、私はその鳥のことが全く信用できなかった。
何しろ、うちにいる3羽のアヒルとは形状が全く異なっている。
「嘘をつけ!」と私は叫んだ。
「信用してください」とその鳥は言った。「私はアヒルの理念型を体現しています。私はアヒルがアヒルであるための、あらゆる資質を備えているのです」
私は反論した。「しかし、うちにいるアヒルとは、姿形が全く異なるではないか」
「彼らは彼らでうまくやっているのでしょう。けれども」
「うちのアヒルを侮辱するか!」
私は手に持っていたアヒル・クビキリ・ナイフを振り上げ、そのアヒルと名乗る鳥の首を斜めに切断した。ガァーッという断末魔が、その生首から聞こえてきた。血も流れることなく、首と胴体はゆるやかに消失していった。
チャイムはもう鳴らなかった。
私はベッドへと引き上げ、3羽のアヒルと共に眠りについた。
何となく、これで平和になる、と思った。それは確信に限りなく近かった。
しかしアヒル・クビキリ・ナイフと、あの鳥との間を結ぶ、矛盾線が、確信を少しだけ遠ざけていた。
しかしこの世界に絶対は無い。私はそのことを、とことん理解しなければならない。それがイニシエーションであり、きっと今の私にとって必要なことなのだろうと思った。