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ねとねとねとはのねとねと日記

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ねとはとは何なのか④

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私がモンキー伯爵からの”呼び出し”を受けたのは、あの恐怖の出来事から三日後のことだった。

下腹部の辺りがチクチクとして、最初はただの腹痛と思おうと努めたが、あまりにも痛みと痛みの間隔が人工的・意図的に感じられたため、伯爵の腕毛が遠隔操作されているのだと解釈せざるをえなかった。どうも例の剛毛が腸の辺りに食い込んでいるらしい。引っ張られるような痛みだった。

先日の去り際には、自ら会いに来るとか言っていたくせに、話が違うではないかと腹が立ったが、コロコロと言うことを変えるのが、かの人物の悪癖だったと思い出し、ため息をついてあきらめた。

 

それでは、一体どこに向かえば良いのかと思ったが、どうも痛みには”方向”があるらしいことがわかった。要するに、引っ張られる方向が一定なのだ。前を向けば前方に引っ張られ、180度体の向きを変えれば、後方に引っ張られる。伯爵と腕毛の間に、強力な引力が働いていると考えるのが分かりやすい。

痛みも少しずつではあるが強くなってきたので、急ぎ支度をし、痛みの指す場所へと足を向けた。三角測量の要領で、だいたいの距離は見当が付き、歩ける距離だと判断した。しかし、まったく、こんなわけのわからないことで三角測量の知識を使いたく無かった。

 

2kmほど歩いて到着した目的地は、廃工場のようだった。試しに周囲を廻ってみたが、チクチクの方向は明らかにこの中が正解であると告げていた。中途半端なフェンスで囲ってあり、立ち入り禁止な雰囲気を醸し出しているくせに、簡単に入り込める、雑な作りになっていた。不良の溜まり場とは、こういうところにできるんじゃなかろうかと思った。

入りやすそうな場所を見つけてフェンスを乗り越え、眼前にそびえる錆だらけの建物を見渡した。一般的な学校の体育館と同じくらいの大きさのように思えた。

やはり錆だらけで汚らしい扉が中途半端に開け放たれており、私はその隙間からそっと中を覗き込んだ。すると目の前に、かのモンキー伯爵の顔がヌッと現れたので、心臓が飛び出そうになった。同時にものすごい嫌悪感と吐き気が込み上げてきた。伯爵の口がもぐもぐと動いているので、どうも例の猿飴をほおばっているらしい。少し遅れて、強烈な腐臭が意識の俎上に上がってきた。吐き気の原因はこれらしい。だが、嫌悪感の原因は、伯爵の存在そのものだろう。

 

伯爵は開口一番「タワケ!」と唾を飛ばしながら叫んだ。私は唾を避けれず、顔面いっぱいに臭い汚水の雫を垂らすはめになった。なぜ私はこんな目に遭わなければならないのか、驚きと怒りと悲しみと怖れの感情が押し寄せてきたが、それを何とか抑え、冷静にこの現実を乗り越えようと努めた。

「伯爵、お呼びでしょうか。そして、なぜタワケなのでしょうか」

「お前が来るのが遅すぎるからだ。待ちくたびれた。もう少しで、私の腕毛でお前の腸を突き破るところだった」

伯爵の言葉を信じるならば、どうやら私の腹の中にあるのは、受信機の役目どころか、遠隔操作型の爆弾に近い代物でもあるらしい。改めて背筋が冷たくなるのを感じた。

目の前には以前と同じ、ゆったりとした格好、かつ腕毛全開の伯爵が立っていたが、そのもう少し後ろに、数人の男女が向かい合って立っているのが見えた。男女混成の4人組が、二組だろうか。緊張感が漂っている。彼ら彼女らも、私と同じように伯爵に呼び出されたのだろうか。

 

伯爵は、ものすごい勢いで笑顔を形作った。狂気と紙一重の笑顔だった。

「お前には審判を務めてもらう」

何の前置きも無しに、伯爵は唐突に言った。

「審判?」

「楽しい楽しい、異種サークル対戦の審判だ。ここには、もはや楽しさしか存在しない」

どこからどうみても、楽しげな空気のかけらも見当たらなかった。後ろにいる8人の男女が一様に示している表情は、まるで死の覚悟を決めているようにも見えた。

 

《続く》