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ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

NOBEL『妄想テレパシー』 レビュー:(未読者向け ネタバレ無しver.)

漫画

twitter媒体からの新境地

オススメ ★★★★

 

他人の心の声が聞き取れる、という設定は、フィクションの世界において、かなりありふれている。いわゆるテレパシーと呼ばれる能力。それを物語内で、”外面的”にフォーカスを当てた場合、たとえば能力を利用して事件を解決するだとかのSFドラマやクライムサスペンス等々に流れ得るだろう。逆に”内面的”にフォーカスを当てた場合、その能力を持っているがために生じる葛藤を中心とした人間ドラマ等々に流れ得るだろう。そして本作は後者に当たる。

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<本作は主人公の葛藤に主眼を置かれている>

地味でメガネな女子高校生・中野彩子には、人には言えない秘密があった。それは、”他人の心の声を聞くことができる”という超能力を持っていること。自然と伝わってきてしまう、多くは汚い他人の本音に、彩子は幼い頃から苛まれ続けてきていた。この能力のために、友達を作ることもできず、孤独に過ごしていた、そんな日常のある日。前の席に座る男子の心の声が、自分への妄想ばかりであることに気付く。どうやら彼は自分へ好意を抱いているようだが、しかしその内容は性的なものばかりなため、彩子は困惑するのだがーー。

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<男子高校生はエロいことばかり考えている>

この漫画には大きな独自色がある。それは、他人の心の声が、”カラーで表現されている”ということである。それ以外は普通のモノクロであるため、心の声だけは浮いて見える。カラーとモノクロの絶妙な同居は、視覚的にわかりやすく、そして面白い試みである。なお媒体はtwitterで、星海社の「ツイ4」という4コマ漫画群の中の一作品である。

 

主要な登場人物は3人(後にもう1人増えるが)。

主人公である彩子と、彩子に好意を寄せる男・隼人、そして、隼人に好意を寄せる少女・マナ。隼人とマナは幼馴染で、皆、同じ高三のクラスメイトである。

マナから聞こえてくる声は、当初は彩子に対する汚い声ばかりだったが、建前上、マナは彩に近づき、修学旅行の班も同じになる。しかし徐々にマナは彩に心を許し、二人は仲良くなっていくのだが、修学旅行中に、大事件が起こってしまう。これ以上はネタバレになってしまうため控えるが、この修学旅行が、物語序盤の山場になっている。

当初は我々読者から見ても、マナが性格の悪い少女であるように映る。しかし、徐々に彼女が魅力的にみえてくるのが、面白いところ。この漫画の魅力は、マナの存在によるところが大きい。

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<カラーの部分は心の声と姿>

容赦なく描写される、他人の心の醜さや、欲望、欲求。そういった汚さは、人間誰しもが持っている。そんなものに、幼い頃から触れ続けることが、いかなる苦痛を生むか。主人公である彩子は、そんな他者たちと、波風を起こさないよう、人間関係を深めることを避け、なるべく自分を出さず、流されるように生きてきた。

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<勝手に聞こえてきてしまう、他者の心の暗い叫び>

この物語は、そういった背景を持つ彼女が、新しい人たちと出会うことで生じる、変化を描いている。

汚さの中でこそ、浮き彫りになる、人間の美しさもある。この物語の登場人物たちは、皆、そういった美しさも持ち合わせている。それらに触れることで、彩子の内面で渦巻く葛藤、そして救済が描かれていく。

 

シリアスな部分ばかり取り上げて紹介してしまったが、基本的にはそう暗いばかりの漫画でも無い。彩子に好意を寄せている隼人のエロ妄想がコメディの要素を孕んでおり、良い具合にシリアスさを中和してくれている。一応の基調としてはラブコメ漫画でもあるのだ。

 

さて、約12作品を擁する「ツイ4」の中でも本作は人気作である。本作は毎日午後3時に更新されており、僕はその時間を毎日楽しみにしている(ちなみに他の「ツイ4」作品では柳田史太の『トモちゃんは女の子!』と大川ぶくぶの『ハニカムチャッカ!!』も楽しみにしている)。

そして本作は、今までの連載分を全て公式HPで読むことができる!(http://sai-zen-sen.jp/comics/twi4/moutele/)

 

読み始めて特に拒否反応が出なければ、とりあえず序盤山場の修学旅行の部分まで読んで頂ければ、と思う。

なお、こぼれ話になるが、本作の舞台は京都である。そして、話の展開に淀みがなく、新キャラ投入やイベントのタイミングなどがかなりスムーズで、こなれたプロットなため、もしや……と思って調べてみたら、案の定、作者は京都精華大学マンガ学部出身であった。かの大学出身で活躍している新人を最近よく見かけるので、まったく、大したものだなぁと思った。

 

現在、単行本は既刊2巻。連載では読めない書き下ろしがたっぷり収録されているので、そのあたりでマネタイズしているのだろう。気に入ったあなたは、買って応援じゃ。

 

妄想テレパシー(1) (星海社COMICS)

妄想テレパシー(1) (星海社COMICS)

 

 

妄想テレパシー(2) (星海社COMICS)

妄想テレパシー(2) (星海社COMICS)