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ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

脇田茜『ライアーバード』 レビュー:(未読者向け ネタバレ無しver.)

未熟な青年と少女の、歌とギターを通じた成長譚 <ボーイミーツガール>

オススメ ★★★★

 

巷には音楽をテーマとした漫画が山のようにある。

それらの多くの作品は、仲間との絆や周りからの評価を得て、少しずつ大きな世界に羽ばたいていき、結果的にはそういった"インフレ"を基調とした成長譚となる。

それが音楽やバンドを題材とした物語の宿命となる、というパターンは数多い。

しかし、この漫画は、それらのパターンからやや外れる。

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<画像:"音楽喫茶 ライアーバード">

「選んだのは3つ  ギターと音楽と  ライアーバード」

孤高を望む青年・ヨタカは、バイトとバンドの助っ人の生活に明け暮れる、その傍らで、彼が愛する音楽喫茶「ライアーバード」へと通いつめる。憧れの対象であり、心を許すただ一人の存在である、”マスター”に会うために。

ギターと音楽、そしてライアーバードさえあれば、それで良いと思っていた。マスターの他の誰にも心を許さず、世の中を見下していた、そんな彼が、ある日一人の女の子と出会う。天真爛漫で、かつ野生児のように傍若無人な少女・コト。しかし彼女は、とある天性の才能を持っていた。一見正反対な性格の二人は、互いに反発しあうのだがーー

 

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<画像左:他者に興味を示さないヨタカ 画像右:天真爛漫なコト>

この作品は昨年度のランキング2位に入れたマンガで、やはり物語としてのかなりの強度を誇っており、かつ必要十分以上の高い画力も見逃せなかった。

こいつは、恐らくは凄い高みまで到達するだろう、第一話を読んだだけで、そう予感させる力があった。

なお、”漫画トロピーク”の全体のランキングでも第4位にランクインしている。

が、他のランキング媒体では不思議とほとんど話題に上っておらず、非常に残念である。なぜこんなにも素晴らしいマンガが?

1巻と2巻の(同時)発売日が昨年(2016年)の10月13日であったため、時期としてやや不遇であったのも、もしかしたら要因かもしれない(好意的解釈)。

 

キーワードは「音楽」と「ボーイミーツガール」。

それなら『BECK』とかでも読めば良いじゃないかって? いいや違う、冒頭で述べたように、それらとは全然テーマが異なるマンガである。

 

舞台は京都。鴨川近辺の風景が、背景として思いきり出てくるし、物語の舞台装置としてもちょくちょく機能する。

この点に関しては、ちょっと個人的な思い入れが強い(僕は京都で約10年間過ごしたし、今でもゆかりがある)ので、それを無視できない加点要素があるのは事実だが、それを差し引いても素晴らしいマンガだと思う。

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<画像:鴨川と三条大橋>

まず読者の目を惹きつけるキャラクターは、おそらくヨタカではなく、コトだろう。彼女は非常に魅力的な存在として描かれる。ヨタカの非社交的で憎まれがちな性格に対して、彼女の純朴で素直な性格は際立っている。多くの読者は彼女を好意的にみるだろう。しかしそんな彼女にも大きな欠点がある。純粋過ぎるがゆえに、歯に衣着せぬ物言いも多くなってしまい、結果、社交的に努めるもののうまくいかず、結局は対人関係がうまくいかない、という不器用さである(この対人関係が下手くそであるという点に関して、ヨタカと共通していることは注目すべきことである。一見正反対にみえる二人には、無視できない共通点があるのである)。

そんな彼女の不器用さすらも、読者からは愛らしく映ることだろう。そうした魅力的な性格を背景として、この物語最大のキーポイントでもある、彼女の天性の才能がさらに読者を惹き付けるのである。すなわち、彼女が共感覚の持ち主であり、音を視覚的に捉えることができるということ、そして、一度聞いただけの音を、完璧に再現することができる、という才能である。

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<画像左:音が視覚的に"見える"  画像右:一度聞いただけの音楽を再現> 

このチート級の天才描写が、圧巻。音の視覚化の表現が素直に素晴らしいのである。この要素だけでも、一見の価値は十分にある。

 

一方で、ヨタカにも卓越したギターの技術がある。それはひとえに、彼の努力の賜物であり、天才であるコトとはこの点は対比して描かれる。そして我々読者が感情移入をしてみる主な対象は、結局のところ、天才で浮世離れしたコトではなく、ヨタカである。彼は主人公である。

 

そういったキャラクターたちの、要素要素を総合的に包み込んでいる全体のストーリーは、とどのつまり、ボーイミーツガールである。

正反対でありつつも、同時に似た者同士でもある、ヨタカとコトの二人は、互いに互いを補完する存在として、物語は動き始める。

 

さて、これ以上のネタバレは本稿では避けよう。

冒頭から魅力に溢れている物語だが、ボーイミーツガールとしてのストーリーは、今後、少しずつ加速していく。

現在、既刊は2巻。是非、皆さんと共に、この物語の行く末を見届けたいと願う。

 

なお、この作品も試し読み可能である。コミックリュウの公式サイト(http://www.comic-ryu.jp/_lyrebird/)でも第一話を読めるし、今のところpixivでもその続きを読めるようになっている。まずはご覧いただけたら、と思う。

 

(ちなみに、下のamazonリンクの表紙画像を見て察して頂きたいのだが、そもそも表紙からして作者の力量が溢れ出ているのを感じて頂けるだろうか。ときどき、表紙を見ただけで、この作品は面白いだろう、と予測できる場合があるが、本作もそれに当てはまるものであった) 

ライアーバード 1 (リュウコミックス)

ライアーバード 1 (リュウコミックス)

 

 

ライアーバード 2 (リュウコミックス)

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