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ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

漫トロピー⑥

漫トロピー

時は2007年の年末に移る。冬コミである。

ここでも記憶ははっきりしないのだが、それまであまりコミケというものに足を運んだことは無かったと思う。むしろこの時が初参加だったかもしれない。

特にお目当ての同人誌があったというわけでも無いのだが、例によってお祭り好きである自分は、コミケの喧騒をも楽しんでいたのを覚えている。

東だとか西だとかの概念もよくわかっておらず、ポポンポポンと飛び跳ね、はしゃぎながら、挙動不審に首を振り回しつつ徘徊していた。

そうこうしつつ、肉の壁の隙間を練り歩いていると、いつの間にか西の”評論島”にたどり着いていた。

「ははァ、コミケにはこんなゾーンもあるのだなァ。なに、ナンパ入門? なに、家電量販店の裏側を教えます? フムフムフーム」と、ブースというブースに舐め回すように視線を泳がせていると、ある一つのブースが僕の目を引いた。

東京大学漫画調査班 TMR

2007年の漫画ランキング! と、その同人誌の表紙には謳われていた。

僕はいわゆる、漫画ランキング本に目が無く、宝島社の『このマンガがすごい』やフリースタイル社の『このマンガを読め』やらは毎年購入している。

そんな僕だから、もちろん、この同人誌には自然に興味が湧いた。

しかも商業誌のランキング本では無い。大学のサークルが創った同人誌媒体で、しかも東京大学なのだ。

試し読みを請い、パラパラとページをめくってみると、いかにも東大生の創った作品らしい、膨大な情報量の渦に圧倒された。

考えるまでも無く、自然と財布へ手が動いた。

 

関西への帰りの電車の中で、むさぼるようにその冊子を読み込んだ。

ランキングの一位こそはハンターハンターだったが、二位以下は当時の僕の知らない漫画だらけだった。

上述した商業媒体が作るランキングの傾向とはどこか違う趣もあったし、何より、冊子の構成が独特で、それでいて完成されていた。

 

冊子の構成は、大きく、総合ランキング、個人ランキング、座談会、クロスレビュー、個人寄稿、に分かれていた。

驚いたことに、個人ランキングは、一人30作もの漫画を順位付けで挙げていた。

1人のランキングにつき、一位が30点、二位が29点、・・・、三〇位が1点、という方式で、サークル会員約20名を集計し、その合計点によって総合ランキングが作り上げられていた。

そして、”座談会”によって、ランキングに対する談義が繰り広げられ、個人それぞれが提出したランキングについても、時に褒め(「この漫画を入れたのは偉いね、色んな漫画を読んでいるんだね」)、時に貶し(「なんだこのランキングは。君、本当にちゃんと漫画を読んでいるのかね?」)、「世界最強の漫画ランキング」を作るべく、切磋琢磨しているようだった(少なくとも大義名分としては)。

 

僕は衝撃を受けた。

ここまでお読み頂いた諸兄ならわかるであろう。僕が京大中を探し回っても見つけられなかった漫画読みサークルが、東大には存在し、しかもコミケに出店、内容も恐るべき完成度を誇っていたのだ。

ロマサガ2で例えれば、のほほんと洞窟を歩いていた僕の真横に突然ダンターグが出現し、”ぶちかまし”で全滅させられたようなものだった。