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ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

漫トロピー④

漫トロピー

そこはキャンパスの中でも出店が最も多く立ち並ぶ、中央グラウンドの中だった。

確か”お祭り広場”みたいな学祭限定の名称を持つ広場だったと思うが、四辺にまんべんなく、やれタコ焼きやら、やれインドカリーやら、やれ特製ギョーザやら、やれ占い屋さんやら、多くの出店が所狭しと立ち並んでいた(ちなみにスイエー部は占い屋さんを出していた。僕は先輩風を吹かすだけ吹かしに行った後、颯爽とその場を去った)。

広場の一角にはステージが立ち、やれアカペラやら、やれ大喜利やら、やれ軽音ライブやらの催し物が、間断なく繰り広げられており、広場全体にその音声を響かせ、お祭りの賑わいに一役買っていた。

広場の中心は、それぞれの出店から放たれた、客引き役のエセJK(実際には制服を着た女子大生)やら、エセイケメンやらが自分たちのお店に取り込もうとし、訪れていた客たちも、その客引きとの駆け引きを楽しんでいた。

皆、楽しそうに見えた。僕はそれを端から見て、クールアンドニヒルな笑みを浮かべるごっこをして、エセ楽しんでいた。本当は少し寂しかったのかもしれない。そんな折、妙なものが視界に入ってきた。

 

ふつうでは考えられないものがそこにはあった。

いや、実際、京大の学祭というものは、奇を衒いたがり屋のここぞとばかり合戦的な趣もあるので、そこまで珍しいものでも無かったのだが、モノがモノだけに、殊更僕の目を引いた。

 

グラウンドの一辺に立ち並ぶ、とある出店の前に、ゴザが敷いてあった。そして、その上には漫画が積み重ねられていた。控えめに言って、邪魔である。だって、フリーマーケットを行うスペースは別の場所にしっかりと設けられているのに。ここは、タコ焼きを買いにくる将来の受験生や、エセイケメンが行う華々しき軽音ライブを見に来る煌びやかな女子大生が通るスペースである。一体なんだというのか。

などという倫理的思考をその時の僕が巡らしたかというと、実際そんなことはなかった。その時僕が思ったのは「ウヒョッ、漫画あるやんけ。ウマウマ」くらいなものであった。学祭なんて、ゴチャゴチャしてナンボである。

 

ゴザに近づいた僕は、そこで二度目のビックリをした。置いてある漫画が、やたらマニアックなものばかりだったのだ。置いてある漫画の中で一番メジャーなのが古屋兎丸の短編集レベルである。店主、何奴か。しかし、ゴザと漫画が置いてあるだけで、人間がいない。

お祭り広場の邪魔なスペースにゴザとマニアックな漫画だけが置いてある、この状況、シュール過ぎるだろ、と思いかけたその瞬間、出店の方からヒョコヒョコと男が現れた。

そこで僕は三度目のビックリをした。

驚いたことに、彼は僕の知る人間ではないか。