ムラサキ
紫色の空に緑の太陽が輝き、毒々しさにまみれた川沿いの道を僕は従姉妹の伊都ちゃんと一緒に下校している。
徒歩の僕に合わせて自転車を押していた彼女はふと、土手のドクダミに心を奪われ、摘み始める。
ドクダミに夢中な彼女の首筋に浮かぶ紅色のホクロに僕はエクスタシーを感じるけれど、ひねくれ者らしく何でもないことのように達観の笑みを浮かべてみる。
彼女は伏し目がちに振り向き、おもむろに僕のヒザの擦り傷に摘み終えたドクダミを押し付ける。
驚いた僕は性的な血流を止められず、一方で彼女は全能的な神々しさを照射している。
見透かされた僕と見通す彼女の間に横たわるあらゆる自然の愛おしさに、心地よさと安心を感じる。
凍結された夕方のことだった。