ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

漫トロピー⑬

以降も毎週金曜日の新歓を重ねていった。

 

新入生の数は、4月18日はリピーターに加えて6人、合わせて12人。

4月25日は、なんと合計16人。

5月2日は、14人。

 

食堂ルネの1~2テーブルに所狭しと積み重ねられた漫画も、ますますカオスと化していった。

記録をみてみると、5月2日がもっとも漫画量が多そうである。長くなるが、当時の活動ノートから写してみよう……。↓

 

SF名物・こももでしょ・風水譚・ゆびさきミルクティーポーの一族・ナショナルキッド・BLCD(これはBLのCDのことかもしれない。なんでやねん)・告白・暗黒皇子 ダーク山田・forget me not・少女セクトtrue tearsベイビーリーフ・BLACK BRAIN・デッドトリック・おまかせスピリッツ・藤田和日郎短編集・破天荒遊戯・探偵奇譚・少年少女・ミスミソウアオイホノオ世界の終わりの魔法使い・想うということ・機動旅団八福神・ルート225・ヨルムンガンド・マフィアとルアー・アンダーカレント・生活・ニニンがシノブ伝・残暑・恋の門・ef・花子と寓話のテラー・ロザリオとヴァンパイア・やえかのカルテダイの大冒険砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない未来日記・おばけがぼくをペンペンなぐる・嘘喰い・発育っちゃうぞ・小指でかきまぜて・闘破悪斗・ろりぽ・デッドマンワンダーランド喰霊キョンイズム・JOKER・テクノエキス・こどもの森・スプリンガルド月詠・ももたまミックス

 

疲れた。読み取れる範囲で書いたが、誤字脱字ほか間違いはご容赦願いたい。これらの漫画は、新入生がもってきてくれた漫画も多分に含まれる。すなわち、この時点、新歓コンパもまだの時点で、自然に漫画の貸し借りの文化が生まれていたことになる。この貸し借りについては、サークルの活動において、今後大きなウェイトを占めていくことになる。

 

上記の漫画を羅列しながら素朴に思ったことだが、やはり漫画読みたちは、自分の好きな漫画を他人に読んでもらいたいんだなァ、ということ。程度の差はもちろんあれど、基本的にはきっとそうなのだろう。そして、読んでもらったら、感想を聞く。そして語り合う。こういうことを、皆、やりたかったのだろう、と。サークル立ち上げの、我々の、そして僕の、根幹たる想いに直結していることで、感慨深いことである。

ところで、この「語り合う」ということと関連して、さらには前回触れた「漫力」とも関連して、後々、サークル内で大きな騒動が巻き起こっていくことになるのだが、この点については、また後の方で触れたいと思う。

 

さて、その次の週、5月9日も活動を行い、翌10日に、四条の「Qoo」にて、記念すべき新歓コンパを行った。

ここでいよいよもって、サークルが形になったのだと。いわば、(仮)が取れたのだと。そのような観念が頭に浮かんでいたことを覚えている。

今思えば、改めて、この時に『京大漫トロピー』が真の意味で結成されたのであろう……。当時は浮かれていて、あまり深くは考えていなかっただろうが。

 

さて、翌週の5月16日は、通常の活動をお休みにして、「三条ブックオフ企画」なるものを実行した。

当初は、月に1度、特別な活動を行おうと画策していたのだ。その第一弾が、これ。ただし、結局第二弾以降には続かなかったのだが……。

 

《続く》

漫トロピー⑫

2008年4月11日。

前週に来てくれた2名も、続けて来訪してくれていた。

ちなみに男性の”さなさぎ”の方は、どうせ新歓中は奢ってもらえるのだということで、毎週毎週、食堂でもっとも高いランクのメニューを頼み続けていた。さらに、他の新入生に対して、「おう、君、新入生?このサークルはネ……」という調子で話しかけ、上回生だと勘違いさせるという、ある種の強さを発揮していた。豪胆な男である。この肝の太さは、以来、サークルとしての、ある意味一つの柱として機能していった……気がするが、それはまた別の話である。

女性の”ガチムチ山”の方は、マイペースに安定して居続けてくれた。こちらもある意味貴重な柱として機能していった……気がするが、それもまた別の話である。

 

さて、新歓する側の我々同級生・初期メンバーは、5名。前週は新入生2名だったので、ゆっくりと対応できていた。

しかし、なんと、この日は新入生が、前出の2人を合わせて、9名も来てくれた。ふつうのサークルの新歓としては通常人数なのかもしれないが、我々にとっては驚くべきことであった。嬉しい悲鳴を上げた。いよいよもって、サークルとして形を保っていくこと、あるいは保っていかなければならないこと、が現実味を帯びてきた。彼らは入学直後の貴重な一日を、我々のサークルのために充ててくれているのだ。彼らを落胆させないよう、楽しんでもらえるようにする、責任というものがある。

(ところで上記「新入生」という言葉で一括したが、2回生以上の方も新歓に複数名、来ていただいていたことを付け加えておく)

 

とはいえ、やることは決まっている。漫画の話をするのだ。それだけだ。

そして、食堂ルネの一角を陣取っていた我々は、我々オススメ、かつ、アッピールポイントになるような、色彩の強い漫画を持ち込み、狭いテーブルの上に積み上げていた。それらの漫画を新入生たちに勧めて、読んでいただいたりもした。

ところで、後に、我々サークルの重要用語として、「漫力」という言葉が生まれることになる。概念としては、漫画読み力といえばいいのか、要するに漫画の詳しさを示す指標ともいえる、まぁ曖昧な言葉でもあるのだが、しかし一言で言い表せる便利な言葉でもあった。使いかたは、「俺、漫力たけぇから、この漫画を理解できる」「僕、漫力低いので、もっと沢山漫画を読むッス」みたいな感じである(本当にこんな言い方をしていたかは別として)。

そして、今考えてみれば、我々は、我々の漫力を侮られないように、持ち込んだ漫画でマウンティングをかけていた、という面は否定できないかもしれない。新入生に、「なんだ、漫画読みサークルとか謳っているけど、大したことねぇな、こんなんなら一人で家で漫画読むワ」と思われたら負けである。我々は勝ちにいった……(傲慢な表現だ)。

それと、もうひとつ、我々はある意味においてセコい戦略をとった。漫画を貸すのである。善意プラス、セコみである。なぜかというと、お察しのとおり、”返しに来てくれるから”である。強制リピーター機能である。自然にサークルに馴染んでもらうという、寸法だ。

 

こういった戦略(?)、あるいは我々の魅力のアピール(??)が、功を奏したのか、少なくない割合の方々が入会してくれることになった。結論からいうと、この日に来てくれた新入生の、半数以上が、最後まで(卒業まで)サークルに在籍してくれることになる。

 

さらにちなみに、記録が残っているので、この日に積み上げられていた漫画を、恥ずかしながらご紹介することにしよう……(今見ると本当に結構恥ずかしい。当時は2008年だったということも含めてご覧ください)。

ヨルムンガンド放浪息子・残暑・イエスタデイをうたって青い花Dearsおやすみプンプン・ナショナルキッド・DDTゆびさきミルクティーもっけユリア100式幻影博覧会・少年少女・BLACK BRAIN・ポーの一族トーマの心臓・おつきさまのかえりみち・かすとろ式

以上。

 

さて、次週以降さらに、カオス、あるいはエントロピーが増していくことになる。

 

《続く》

現実的な日記13-3

聴覚に集中してみると、先ほどまで聞こえていたはずの喧騒が止んでいることに気づく。状況を鑑みるに、当たり前といえば当たり前なのだが、今の今まで、集中をしなければ気づかなかった。これも不可思議な現象だった。

しかし、全くの無音というわけではない。ゴポゴポと、まるで良く手入れされている水槽のような音がそこかしこから聞こえてくる。発生源はすぐに見当が付いた。元人間(?

)の青い柱たちである。耳を近づけて確認をしたいという衝動にかられたが、間違って触れてしまうと危ないと思い、押し留めておくことにした。

続いて嗅覚。なんとなく、何かが焼き焦げたような、若干香ばしいような、そんな匂いがする気がしたが、そもそも私は生来的に鼻が悪いので、自信が無い。気のせいかもしれない。どのみち、匂いの出どころの見当は付かないし、この件は保留しておくことにした。

味覚は飛ばすとして、最後に視覚であるが、それは見えている範囲内で、先ほどから十分承知していることである。360度、確認してみても、五本足の犬が消えていることと、青い柱があちこちに見えていること、それらのいくつかは移動を続けていること、やはりその程度しか分からなかった。

が、ふと見えていないものが一つあることに気づいた。自分が背負っているリュックである。これだけは確認していなかった。自分のものなのだから、何も異変が起きていないはず・・・と思いながらも、確認するに越したことはない。

リュックのジッパーをゆっくりと開けてみた。

現実的な日記13-2

そそり立つ青色たちが動き始めた。

触れてはならない、触れられてはならない。そう直感していた私は、不規則な動きにみえるそれらにぶつからないよう、細心の注意を払い、避け続けた。最初、速度もバラバラ、方向もバラバラに、法則なしに動いているかと思ったが、ホームに列を形成しているままの青色を見て気づいた。この青色は人間の動きと変わらない。なんのことはない、現実の人間が青色の棒として反映されているだけなのだ。

だからといって、接触による危険の直感がぬぐい去られたわけでは無い。何故だろうか。青色を注意深く避けながら、考えようとしてみたが、少々思考の材料が足りないように思える。まずは五感を使って観察してみることにした。

さしあたって、触覚に集中してみた。すると、肌に触れていたはずの、夏の暑さと駅の空調が混成した、じっとりと生暖かく不快な空気が、いまや感じられないことに気づく。暑いといえば暑いのだが、なんというか、カラっとしている。こう表現するのもおかしい気もするが、空気に"ぬめり"というものがあるとして、それが無い。普段あるはずのものが無くなって、初めて存在に気づくといえば良いのか。真空を体験したことは勿論無いが、もしかしたらこのような感覚なのかもしれない。

続いて聴覚に集中してみる。

現実的な日記13-1

ゾーンに入ってきたのはつい先日のことである。

大阪は梅田駅のホームの壁に、犬の落書きがしてあり、なんとも言えない味があった。アホ面をした犬の単純な絵なのだが、よく見ると足が5本ある。見れば見るほど気になって仕方が無い。それに触れる理由は無いのだが、何故だか触れなければならない衝動にかられ、ついついその味犬を撫でてしまった。

すると、ナンということか。突如視界がぐにゅあと変転し、めまいとともに激しい吐き気にかられた。当然、その場に立っていられなくなり、座り込んでしまった。同時に異変を感じ、ふと壁を見ると、味犬がてててと動き出し、なんと目の前の壁から抜け出て、あさっての方向に去ってしまったでは無いか。

周りを見渡すと、大勢いたはずの人々が誰もいなくなっている。その代わり、人々がいたはずの場所に、奇っ怪な青色の棒が、ゆらゆらとゆらめいている。自分以外の人間は、見当たらない。

あの青色の棒に触れてはならない、と直感した。意味が皆目わからないが、アレに触れると遠くに飛ばされて戻ってこれないような、そんな予感があった。

青色が蠢き始めた。