ねとねとねとはのねとねと日記

現実と想像とマンガ

現実的な日記13-2

そそり立つ青色たちが動き始めた。

触れてはならない、触れられてはならない。そう直感していた私は、不規則な動きにみえるそれらにぶつからないよう、細心の注意を払い、避け続けた。最初、速度もバラバラ、方向もバラバラに、法則なしに動いているかと思ったが、ホームに列を形成しているままの青色を見て気づいた。この青色は人間の動きと変わらない。なんのことはない、現実の人間が青色の棒として反映されているだけなのだ。

だからといって、接触による危険の直感がぬぐい去られたわけでは無い。何故だろうか。青色を注意深く避けながら、考えようとしてみたが、少々思考の材料が足りないように思える。まずは五感を使って観察してみることにした。

さしあたって、触覚に集中してみた。すると、肌に触れていたはずの、夏の暑さと駅の空調が混成した、じっとりと生暖かく不快な空気が、いまや感じられないことに気づく。暑いといえば暑いのだが、なんというか、カラっとしている。こう表現するのもおかしい気もするが、空気に"ぬめり"というものがあるとして、それが無い。普段あるはずのものが無くなって、初めて存在に気づくといえば良いのか。真空を体験したことは勿論無いが、もしかしたらこのような感覚なのかもしれない。

続いて聴覚に集中してみる。

現実的な日記13-1

ゾーンに入ってきたのはつい先日のことである。

大阪は梅田駅のホームの壁に、犬の落書きがしてあり、なんとも言えない味があった。アホ面をした犬の単純な絵なのだが、よく見ると足が5本ある。見れば見るほど気になって仕方が無い。それに触れる理由は無いのだが、何故だか触れなければならない衝動にかられ、ついついその味犬を撫でてしまった。

すると、ナンということか。突如視界がぐにゅあと変転し、めまいとともに激しい吐き気にかられた。当然、その場に立っていられなくなり、座り込んでしまった。同時に異変を感じ、ふと壁を見ると、味犬がてててと動き出し、なんと目の前の壁から抜け出て、あさっての方向に去ってしまったでは無いか。

周りを見渡すと、大勢いたはずの人々が誰もいなくなっている。その代わり、人々がいたはずの場所に、奇っ怪な青色の棒が、ゆらゆらとゆらめいている。自分以外の人間は、見当たらない。

あの青色の棒に触れてはならない、と直感した。意味が皆目わからないが、アレに触れると遠くに飛ばされて戻ってこれないような、そんな予感があった。

青色が蠢き始めた。

バーバリアン"よしだ" その2

罵倒子さんは今日もバーバリアンのために新しい脳を焼いている。

「バーバリイェン、アッタラシ、オミソヨ!」という決め台詞を放ちながら、脳ミソをバーバリアン"よしだ"の頭部に向かって投げる、ということを、ひと昔前はよくやっていた。世間的にも一種のブームみたいなものだった。

しかし今では罵倒子さんの筋肉も衰えてしまったし、バーバリアンもひっそりと暮らすようになってしまったため、翌朝用として、晩に"よしだ"の家まで届けにいくという、かなり地味な作業に堕してしまっている。

バーバリアンは無敵なので、暴走されると大変なことになる。だから予めプログラムしておいた脳で、彼のアイデンティティの大部分をコントロールすることにしている。記憶もリセットされるように作っている。彼女と、その統括官であるJAMジイは、彼が何かを学習し、反逆心を持たないか心配しているのだ。幸いにも今日まで、そのような恐ろしい兆候は認めていない。

バーバリアンにおいては、今日も気張って、てきを見つけ出し、やっつけてもらいたい。連綿と続く均衡と秩序を維持するために。そう彼女は願いながら、脳を焼いている。

バーバリアン"よしだ"

バーバリアン"よしだ"は朝目覚めてすぐ、昨日から暖めておいた脳ミソを頭蓋内に押し込んだ。押し出されるようにして、冷めた脳ミソが逆側から出てくる。ところてんのように。バーバリアン"よしだ"は、野蛮であり、不器用でもあったため、冷めた脳ミソをまたしても受け止め損ね、床に落としてしまった。ペタラッと音を立てて、脳ミソがそのブヨブヨ感を主張する。”よしだ”はそれを床から拾い上げ、乱暴に冷蔵庫の中に押し込んだ。なんたって、"よしだ"は新鮮な脳ミソと同化したのだから、古い脳ミソにはもはや愛着は無いのだ。

"よしだ"は朝のクッキングに取り掛かる。先週、オクチから拾ってきた砂糖烏の卵がまだ余っていたので、卵焼きを作ることにした。野蛮に卵を割り、かき混ぜる。隠し味として、古い脳ミソ半丁を冷蔵庫から取り出し、ナタで細かく切り刻み、卵に混ぜ込んだ。熱したフライパンにそのドロドロの粘体をぶち込み、ご機嫌にイニシエの歌を歌いながら、オレンジ色の卵焼きを作り上げた。

オクチに茂っていたドクソウを千切っただけのサラダも作り、インスタントのコーヒーを淹れ、赤茶色に染まった食卓の上に、彼にとっては申し分の無い、豪勢な朝食をこしらえた。

「ウッウッウマス。ウッウマス。ウッウッウマス。ウーウマス」

自分に言い聞かせるようにバーバリアンクッソングを歌い、いわばプラセボの調味料を味覚の周りに彩った。

バーバリアン"よしだ"の長い一日は、こうして始まった。

現実的な日記12

久しぶりだな。私はねとはだ。

ろくな日々を送っておらず、最近バトルフィールド1を買ってほとんど初めてのFPSをやり散らかしているが、ぜんぜんkillれなくて、deathってばかりで、だんだんムカつくばかりだが、きっと続けていれば、上手になっていずれ気持ち良くなれるだろうから、それまで我慢我慢と言い聞かせつつ、勤しむばかりだ。

漫画、あまり読んでいない。情けない。けどちょっとは読んでる。漫画の話をしよう。

 

『無能なナナ』

twitterで流れてきて、あらすじが酷いネタバレだからとにかくとりあえず何も知らずに第一話を読め、みたいなメッセージだったから、そのとおりに読んでみたら、まったくもってその通りで、おいおい編集は無能かよ、ってなった。第一話を読んだ後ならあらすじ読んでOK。第一話はココでダイレクトに読める。<ガンガンONLINE

ガンガンで連載中。ガンガンっていったら、少年がはしゃいで喜ぶ、けれどもおおざっぱでガバガバで無邪気で、ケレン味だけはいっちょまえみたいな作品が紛れ込みがちなイメージがあるけど、この作品はオモロでした。

言える範囲で述べる。ジャンルとしてはいわば心理戦なわけだけど、アホアホガバガバ突っ込みどころ満載な作品が世の中にあふれている中、この作品のシナリオはとってもお上手。常に緊張感を持たせ続ける筋書きが巧みで、隙がなかなか無い。画面の魅せ方も一定水準以上。だから読者は安心して不安になれる。この風味、今までありそうで無かったという感じ。もしあったとしても、ガバガバになりがちなジャンルだから有名作になり切れなかったのかもしれない。

しかし、明らかに第一話のミスリードでぐいっと引き込むタイプの作品なのに、アホみたいなネタバレをあらすじでカマすとは。あるいは編集としても、キャッチーさを苦渋の決断で求めてしまったのかもしれないが、他にやりようは無かったのか? その諸刃の剣、滑って動脈を自傷してしまっていやしませんか?

ともかく、久々に満足したガンガンの作品でした。ちなみに『魔法陣グルグル2』は好きッスよ。強くてニューゲームみたいで良いッスよね。

 

『バイオレンスアクション』

このマンガがすごいwebで月間1位を取ってて、かつ全然ノーチェックの漫画だったから、試しに読んでみたら、面白くなくってビックリした。マジかよ。いったいどこでこの作品、話題になって耳目を集めてたの?

ちょっぴり天然でゆるふわサイコパスな女の子が、簿記の勉強をしながら殺し屋稼業をするっていう、そのギャップのある新鮮なキャラクター「ケイちゃん」が立ち回るオムニバス作品。という紹介になるんだろうけど、その実ぜんぜん新鮮でも何でも無い。こういうキャラクターはよくいる。でもそれは良いとしよう。「あなただけの木を描きたいなら、その木を細かく細かく描きなさい」的な創作の言説を聞くことがある。この手の作品は、主人公のキャラクターの立ち具合がかなりの重要性を占めると思うんだけど、話が進んでも、一向にキャラが掘り下げられない。このキャラクターの魅力はゆるふわな見た目と天然さと簿記! そして殺す! 以上だ! という要素以上の掘り下げが無いから、話数が進むごとに順調に飽きる。もちろん、一巻の段階では、ということだが、漫画読みの感覚としては、二巻以降にどんどん面白くなるというビジョンが見えない。無垢な男の子キャラの投入も、残念ながらショボい。

あと、各エピソードも、なんかヤクザの金を盗んだから始末する、っていう筋書きばっかりで、お前らどんだけヤクザの金盗むの好きやねんてなる。ヤクザの金、盗んだらアカンよ。ろくなことにならへんで。そういう漫画、よくあるやろ? ってなる。そしてこの漫画はそういう漫画だ。

褒めるところがあるとしたら、アクションシーンはスタイリッシュで実際気持ち良いものはある。ヤクザの事務所で銃をパスパス打ち込むシーンはカッコいい。けど残念ながら、ヤクザの事務所で無双するのは寄生獣の後藤さんが既に金字塔を打ち立ててしもうとるから、あなたは後藤さんに負け負けなの。残念ね。

全編通して、サイコパス気味のスタイリッシュさを重視してるのは伝わってくるんだが、いかんせん台詞回しもスタイリッシュ過ぎて、それがためにリアリティを損ねてしまってるのが致命的。

 

『空電ノイズの姫君』

出ました冬目景先生。僕は冬目景の絵が大好きで、時々原画展に赴くし、氏のアートグラフ額装付きも何枚か所持している。たぶん、純粋に漫画家の絵として好きなのは、黒田硫黄林田球と、冬目景、という感じになろうかと思う。

という話はともかく、少々久しぶりに長編の予感のする作品が始まった。僕は冬目景のファンではあるけれど、全部の作品が好きなわけでは決して無い。たとえば氏の短編はあんまし好きでは無いし、マホロミとか幻影博覧会とか、短いエピソードを積み重ねていくタイプの作品もあんまし好きでは無い。思春期の頃に『羊のうた』という業の深い漫画に心が侵食されて以来のファンなわけだが、そういう、後ろめたい暗さがある、なんというか孤独の味方をしてくれるような陰のある冬目景作品が僕は好きなの。それで、久方ぶりに、そういう漫画を描いてくれました。原点回帰の新境地。

主人公の女の子は可愛くて孤独、そのバディとなる女の子も美人で孤独。彼女たちは、これから是認されていく。素晴らしいことではないですか……。

音楽バンドを描く漫画だから、演奏シーンは大変重要。それを冬目景の抜群の絵で描いてくれるんだから、よだれがジュルジュル出て、辛抱たまらん。

あと、やっぱり昔に比べて、台詞回しがめちゃくちゃ上手くなってるのを感じた。羊のうたとか、イエスタデイの初期とかに比べて、さすがに最早ベテラン、冒頭から物語に惹き付ける力が強くなってる気がする。ストーリーは前に前に進んでいくし、キャラもだんだん立ってくるし、もう安心感と恍惚感しか無い。いま恍惚感と言ったが、とても大事なことだが、主人公の女の子の造形がめちゃくちゃ可愛い。コマに現れるごとに僕は恍惚恍惚する。コウコツまみれとはこのことや。

 

ところでなんか最近、面白い漫画を読むと、胃もたれするようになってきている。一度に全部摂取できない感じ。冬目景のも少しずつしか読めなかったし、人間仮免中つづきとかも、しょっぱなからパンチ効きすぎててまだ読み切れてない。一度に読むのが勿体無いとかそういう理由ではなくって、本当に”胃もたれ”って感じなのだ。なんだろうこの現象? トシなのか? 

 

無能なナナ 1巻 (デジタル版ガンガンコミックス)

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バイオレンスアクション(1) (ビッグコミックススペシャル)

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